2025年春企画展 中澤 賢写真展「Correction」
2025年gallery0369春の企画展は中澤賢写真展「Correction」を開催します。中澤さんはPHOTO GALLERY FLOW NAGOYAのオーナーです。中澤さんとはこれまで名古屋と三重でお互いの作品展示を通して松原が企画展に声をかけてもらったり、ギャラリートークに来ていただいたりと交流を進める中で「中澤さんの作品を1度見せてもらいたい」という松原からの提案を受け入れていただき、今回の三重での写真展開催が決まりました。普段作家達の写真展をキュレーションする立場の中澤さんが一体どのようなコンセプトで作品展示を実施するのか。その写真作品をご覧いただきます。
開催期間:2025年3月8日(土)〜9日(日)、14日(金)〜16日(日)、20日(木・祝)〜23日(日)
開催時間:13時〜18時
開催場所:〒514-2113 三重県津市美里町三郷369番地
連絡先:℡ 059-279-3703 メール info@misato0369.jp
駐車場:駐車場は Théâtre de Bellevilleの駐車場 (三重県津市美里町三郷2104)をご利用ください。
関連イベント:期間中は様々な関連イベントを計画しています。開催の予定は決まり次第こちらのwebページやSNSにてお知らせ致します。
下記の日程でイベント開催予定です
①2025年3月2日(日)作品搬入を見る、手伝う、話す、聞く
②3月15日(土)内容未定
③3月22日(土)内容未定
オーナー同士で「流れる会話」というYouTube配信を定期的に行っています。
展示「Correction」に向けてのテキスト / 中澤 賢
タイトル:「安定化によって表面化する抑圧による主体性の喪失」
1990年代後半からインターネットが一般化し、現在ではポストインターネット時代になっている。情報を得る行為やSNSで発信する行為は誰もが行い、仮想世界における行動が、現実を超えて評価される現象も、近年では目新しくなくなってきた。いわゆる、インターネット時代のイデオロギーが安定して運用されつつあるという事である。過去に、このようなイデオロギーが安定化を見せる傾向は、高度経済成長期にもあったと考えられる。
イデオロギーが安定するということは、誰もがイデオロギーを信じて疑わなくなるということである。皆が一様な行動原理に陥ることで、社会は全体主義としての同質化へ向かう。例えば、高度経済成長期では、残業時間も顧みずに働くサラリーマンが普通であったし、女性は女性らしく、男性は男性らしくしなければいけないという考え方も一般的で誰もが疑わなかった。これらは、全体主義としての同質化から生まれた考えだと言える。
インターネットが安定したイデオロギーとして確立し、AI時代へ突入しようとする現在、我々は高度経済成長期における同質化と同じ状況に追い込まれているように感じる。イデオロギーの構造を信じて疑わない思想が、同質化を招き、皆が一様に没個性的な生き方を招いている。これらの原因を抑圧にあるとして、理論家であるニコラ・ブリオーが以下のように語っている。
資本主義の体制によって個人に加えられる同質化という名の暴力、それがもたらす悲惨な結果を〈治癒する〉ためには、主体化の素材が現れなければならない。同質化とは、個人の主体性の基礎をなす相違を抑圧することなのだ[i]。
しかし、同質化を克服することは容易ではない。今まで自身が信じていた思想を覆す行為であるし、そもそも同質化してしまっている事に気が付いていない場合が多い。例えば、ブリオーが言う「個人の主体性の基礎をなす相違を抑圧すること」は、ハラスメント行為であるといえる。様々なハラスメント行為は、現在では誰もが気を付けているが、以前なら一般的であったものや、問題視されていなかったものもある。現在でも気が付かないだけで、現代のイデオロギーの中で、知らず知らずのうちに他者を抑圧し、個人の主体性を奪って生きているのではないだろうか。
本展示は、イデオロギーによる抑圧と、自己と他者の関係性による抑圧という構造を感じるに至り「Correction」の制作が開始された。本展示は、構造主義的な視点で現代を見渡し、全体主義としての同質化の構造を抽象化させている。ポスト構造主義的な展示を行うのではなく、敢えて構造主義的な展示を行っている。こうすることで、イデオロギーの構造に対する批評と、それらの構造に対して、何の思想もなく自ら没個性的な生活を望む我々に対する二重の批評性を含んでいる。
人間の本質的な豊かな生活とはいったいどのような生活なのだろうか。小さいころに自分が考えていた理想の大人と、現在の自分が重なり合っているのだろうか。これらの問いを克服したときに、はじめてインターネット時代を克服でき、本当の意味で、ポストインターネット時代を主体的で豊かな生活が送れるのではないだろうか。
最後に、本展示のお誘いいただき、様々なわがままを快くお許しいただけたgallery0369のオーナーの松原豊氏に感謝いたします。
PHOTO GALLERY FLOW NAGOYA
中澤 賢
[i] ニコラ・ブリオー , 関係性の美学 , 株式会社水声社 , 2024年 , p169
プロフィール:
中澤賢(なかざわ さとし)
名古屋市中区名駅にあるPHOTO GALLERY FLOW NAGOYAから現代アート写真を発信しています。写真の新しい可能性を探求する場として、写真をアートとしてだけでなく、文化や社会を反映する重要なメディアと考え、幅広いジャンルの作品を展示しています。作品と観客との対話を促進し、地域のアートシーンを盛り上げることに努めています。
経歴
2019年3月 京都造形芸術大学 芸術学部 通信教育部 写真コース卒業
2021年6月 愛知県名古屋市中村区名駅四丁目にPHOTO GALLERY FLOW NAGOYAを開廊
2022年3月 京都芸術大学大学院 芸術専攻 芸術環境学科 修士(芸術)修了
Website:
https://www.photo260nagoya.com/
https://researchmap.jp/satoshi_nakazawa
YouTube:
https://www.youtube.com/@photogalleryflownagoya4549
https://www.youtube.com/@nagarerukaiwa